ロココ調とは?時代の流れを追って解説
ロココ様式とは、18世紀のブルボン朝後期におけるフランスの文化・芸術の表現形式です。
主に絵画・工芸等の装飾美術に対して用いられ、前代のルネサンスやバロックの壮麗で厳格な古典主義様式に代わって、宮廷や上流階級の社交場などの貴族や新興富裕層趣味を反映した、アシンメトリーや曲線・中間色による軽やかで優雅な表現を特徴としています。
ルイ15世、16世の時代のフランスにはじまり、イギリスやイタリア・ドイツなど、その後のヨーロッパ全体の宮廷や市民に広まりました。
ロココ様式ができるまでの流れ
ロココ様式は、バロック様式から影響を受けています。
バロックは17世紀に広まり、豪華で装飾的な要素、曲線的なデザイン、ドラマティックな効果を特徴としていました。
バロック様式の一部の要素が後のロココ様式の基盤を築いたとされています。
ロココ調家具の特徴
※以前に当社で製作させていただいた大阪府S様邸にて撮影
豪華で華美なバロック様式の家具に比べると、ロココ様式の家具は軽やかで繊細なデザインです。
自然界からインスパイアされたモチーフが頻繁に使用されている事が特徴で、花、葉、貝殻、羽根などの自然の要素が彫刻やレリーフ、彩色などを通じて家具に取り入れられ曲線的なデザインが施されています。
白やパステル調の優しい色彩、花柄や天使などの紋様が特徴的。
そのロマンティックな飾りは、とりわけ女性に好まれます。
フランス王妃マリーアントワネットは宮廷内において、ロココ調のデザインや装飾を好んで取り入れていた事でも有名です。壁の装飾や家具、調度品、テーブルウェアなど、あらゆる要素がロココの影響を受けたデザインで飾られました。
カブリオールレッグ
カブリオールレッグとは、動物の足をモチーフとしてデザインされた椅子やテーブルなどS字形の湾曲を持つ洋家具の脚のこと。 上部の曲線は外側に、下部の曲線は内側に曲がったデザインになっています。やわらかな線を描くように湾曲したものが多いです。カブリオールとは、フランスのダンス用語であり、弾む、飛び上がるという意味を持っていいます
曲線が美しい綺麗な形で、椅子やチェスト、コンソールにバスタブまで、
ありとあらゆる種類の家具に見受けられる特徴的なものです。
ロココ様式のトレードマーク
優美な曲線と装飾が特徴的なロココ様式。その象徴的なモチーフはどのようなものか説明いたします。
アカンサスの葉
ロココ様式において、アカンサスの葉は非常に一般的な装飾要素で大きな、深く切れ込んだ葉っぱで特徴的で、多くの場合、曲線的なデザインに組み込まれました。これらの葉は装飾として大変美しく価値ががあり、ロココ様式の家具、建築のカペラデコレーション、彫刻、テキスタイル、絵画などのさまざまな意匠として描かれてきました。
貝 (シェル)
ロココ様式は豊かな装飾主義を特徴としており、多様性に満ちています。貝は一般的に富や繁栄、幸運、調和などの象徴的な意味を持ち、これらはロココ様式の美学と調和し、豊な生活や幸せを表現するために貝のモチーフが使用されました。
その自然美、象徴的な意味、海洋への関心、そして装飾的な多様性が組み合わさって、この時代の芸術とデザインに独自の魅力を加えているのではないでしょうか。
パーケット(寄木細工)
寄木細工(marquetry)は、木材の薄い板を異なる色や木目の材料で組み合わせて、模様やデザインを作り出す木工技法です。この技法は、特に18世紀のヨーロッパで流行し、ロココ様式の家具や装飾品に広く使用されました。ロココ様式の寄木細工は通常、対称的で幾何学的な模様を特徴とし、曲線的なデザインに合わせて配置されています。これらの模様は、家具の表面や装飾品に美的な価値を持たせました。
ロココ調は2つの時期がある
ロココ調といえば有名なルイ15世様式に加えてルイ14世からルイ15世の過渡期にもう一つのロココ様式がある事はみなさんご存知でしたでしょうか。
レジャンス(オルレアン公)様式期
ルイ 14世時代の重々しいバロック様式からルイ 15世時代のロココ様式の柔軟で優雅な形式へと移るである18世紀の最初の 30年間に生み出されたフランスの美術様式です。特に家具,室内装飾,工芸品にみられます。建築家 R.コッテ,指物師 C.クレッサンらによる優美な構成で,建築物の平面はしばしば丸みをもち,壁や天井や室内装飾が彫塑的に融合して,それらの間に鋭い分割がなくなった。工芸品にも流麗な曲線が顕著となり,優雅な装飾形式が生み出されました。
※出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
ルイ15世様式期
ロココ調の象徴的で広く認識されている様式です。
ルイ15世(在位:1715年 – 1774年)の時代に特に栄え、フランスの宮廷の貴族階級やや富裕層によって支持されました。
曲線的なデザイン
ルイ15世様式は、優美な曲線やカーブを多用することが特徴です。これらの曲線は家具、彫刻、室内装飾品などのデザインに取り入れられ、エレガントで柔らかい印象を与えました。
花や植物のモチーフ
ルイ15世様式は、花や植物のモチーフを頻繁に使用しました。特にローズやカーリーキューなどのデザインが一般的で、これらのモチーフは彫刻やテキスタイル、絵画などに見られました。
象牙、貝殻、宝石の装飾
象牙、貝殻、宝石などの宝飾品が高度な装飾の一部として組み込まれました。これらの素材は、贅沢さと華やかさを強調するために使用されました。
対称性とバランス
ルイ15世様式のデザインは対称的でバランスが取れており、精巧な細部に対する注意が払われました。
豪華な材料と仕上げ
貴重な材料や金箔、銀箔などが使用され、高級な仕上げが施されました。これにより、贅沢で高級な印象が強調されました。
豪華な宮廷の家具
ルイ15世様式の特に有名な要素は、宮廷の家具デザインです。有名な家具職人やデザイナー、特にジャン=フランソワ・オーブリー(Jean-François Oeben)やジャン=アンリ・リーゼン(Jean-Henri Riesener)が、この時期に優れた作品を制作しました。
各国におけるロココ様式の特徴
イタリア
イタリアのロココ調は、装飾の豊かさが特徴です。
彫刻や装飾的な要素が多用され、特にバロック期からの影響が感じられます。シェルモチーフ、カーヴィング、彫刻の細部への注意が際立ちます。
自然界からの要素が頻繁に取り入れられました。花や葉、動植物、風景などが作品の中で描かれ、バロックの伝統に則って自然の美しさが称賛されました。イタリアのロココ調の作品は、鮮やかな色彩が特徴で、特に黄金色や鮮やかなピンク、ブルーなどが多く用いられました。色彩は作品の明るさと魅力を引き立てました。
イタリアは彫刻家や工芸品製作者の伝統が豊かであり、イタリアのロココ調では優れた彫刻家による彫刻が多く見られます。家具や装飾品に施された精巧な彫刻は、その時代の技術と芸術の高揚を示しています。イタリアのロココ調は、宮廷や教会の建築、装飾、美術にも多く見られました。宗教的なコンテクストでのロココ調は、美しさと宗教的な感性を組み合わせたもので、特に教会の装飾において見られます。ヴェネツィアはイタリアのロココ調の中でも重要な中心地であり、ヴェネツィアのロココは独自のスタイルを持ち、水の要素や東洋からの影響が取り入れられました。ヴェネツィアのカーニバルもロココの華やかさと関連しています。
イタリアのロココ調は、他のヨーロッパ諸国のロココとは異なる特徴を持ちながらも、その美しさと装飾性において広く評価されています。
イギリス
イギリスのロココ調は、フランスやイタリアのような華麗さや軽やかさよりも、しばしばより重厚で実用的な要素を持っています。イギリスの家具や装飾品は、機能性と実用性を重視しました。イギリスのロココ調は、ゴシック復古主義の影響を受けたことがあり、ゴシック様式の要素が組み込まれました。これにより、尖ったアーチ、トレフォイル(三つ葉のクローバー型模様)、ゴシックアーチなどが見られます。イギリスのロココ調は、中国の陶磁器や装飾品、オリエンタルな要素に魅了され、これらの要素がデザインに取り入れられました。また、オリエンタルな風景やトルコ風のモチーフも広く用いられました。イギリスのロココ家具や室内装飾品は、豪華な木彫りが特徴で、細かい彫刻や飾りが施されました。ウォールナットやマホガニーなどの木材が一般的に使用され、美しい木目が活かされました。イギリスのロココ調は、当時の政治的および社会的背景と密接に関連しており、ホイッグ党とトーリー党の対立や王政復古の時代に影響を受けました。これが一部、ロココ調のスタイルとテーマ性に反映されました。
イギリスでは有名な家具職人やデザイナーが多く活躍し、彼らの作品はロココ調のスタイルに大きな影響を与えました。トーマス・チッペンデールやロバート・アダムなどの名前が挙げられます。
イギリスのロココ調は、他のヨーロッパ諸国のロココとは異なるアプローチを取り、その独自性が際立っています。イギリスのロココ家具や室内装飾品は、今でも高い評価を受けており、美術品として高額で取引されています。
ドイツ
ドイツのロココ調は、繊細で精巧な装飾が特徴です。シェルモチーフ、カーヴィング、彫刻、ロココ様式の特徴的な曲線的なデザインが多用されました。
自然の要素や神話のモチーフが頻繁に取り入れられました。花や葉、シャーデン(牧歌的な風景)の描写や、ギリシャ・ローマ神話に登場する神々や神話のキャラクターがテーマとされました。
明るく洗練された色彩が好まれ、特にパステルカラーが多用されました。また、ゴールドや金箔も豊富に使われ、作品を華やかにしました。ドイツのロココ調は、宮廷文化と貴族の支援を受けて栄えました。宮廷や貴族の邸宅、城館、宮殿の装飾が重要なプロジェクトとされ、多くの才能ある芸術家が招かれました。バロック様式の要素がドイツのロココに取り入れられ、より豪華で壮麗な要素も見受けられます。バロックの対照的な光と影の効果が、彫刻や絵画にも現れました。ドイツではロココ時代に優れた工芸品が生み出されました。特に、メルゼンネのポーセリン工場が有名で、高品質のロココ様式の陶磁器が生産されました。ベルリンは、ドイツのロココ調の中でも特に重要な中心地とされ、ベルリン・ロココと呼ばれる独自のスタイルが発展しました。ベルリンのロココは、プロイセン王国の宮廷文化に大きな影響を与えました。
ドイツのロココ調は、他のヨーロッパ諸国のロココとは異なるスタイルとして隆盛し、バロックとの結びつき、自然主義の要素、そして宮廷文化の豪華さが特徴とされています。
自由で華麗なロココ期の終焉
ロココ期の終焉は、異なる国や芸術分野において異なる時期に訪れましたが、一般的には18世紀末から19世紀初頭にかけて、新古典主義様式がロココを置き換える形で台頭したことによって、ロココ期は終了しました。以下は、異なる国や分野におけるロココ期の終焉の時期についての詳細です。
フランス
フランスにおいて、ルイ16世(在位:1774-1792)の統治期に、ロココ様式から新古典主義様式への移行が始まりました。特に新古典主義建築家ジャック=ルイ・ダヴィッドの影響が強く、フランス革命(1789年)以降、政治的な変化とともに新古典主義が優勢となりました。これにより、ロココ様式の終焉が確定的となりました。
イギリス
イギリスにおいても、18世紀末から19世紀初頭にかけて、新古典主義様式が台頭し、ロココ様式の終焉が始まりました。ロバート・アダムなどの新古典主義建築家が活躍し、ギリシャ・ローマの古典的な要素が再び注目されました。
イタリア
イタリアでは、新古典主義運動がロココ様式を取って代わる過程は他の国よりも遅れていましたが、19世紀初頭に新古典主義が浸透し、ロココ様式の衰退が始まりました。
ドイツ
ドイツでも、新古典主義が18世紀末から19世紀初頭に導入され、ロココ様式が後退しました。ベルリン・ロココの影響もあり、新古典主義が広まりました。
ロココ様式は、その装飾的で優美な特性から一部の宮廷や富裕な階級には長らく愛され続けましたが、新古典主義の台頭と時代背景の変化により、19世紀初頭までには主要な芸術様式としては衰退しました。
まとめ
ロココ調の時代の流れを追って解説させていただきましたがいかがでしょうか。
当社では伝統的なロココのモチーフを用いて本格的なロココ調家具やインテリアに合うエレガントなカーテンをオーダーメイドで製作する事ができます。
お気軽にお問い合わせ下さい!
この記事を書いた人
杉山 瑛一 / ウエストハウス・ギャラリー株式会社 取締役
2010年にインドネシア中部ジャワ州でプリンセス家具、姫系家具、ロココ調家具を製作する自社工場を立上げ、オーダーメイド家具を製作する生産システムを構築。2019年に現地法人 PT.SUGIYAMA KAGU INDONESIAを設立。代表就任と同時に現地で就労ビザを取得。主にオーダー家具とオーダーカーテンの販売、インテリア空間の写真撮影と動画撮影・編集を行う。
美しいインテリアを通して心豊かに、見る人々が幸せな気持ちになれるような写真、動画をインスタグラムに投稿して世の人々と分かち合いを行っている。
使用言語:英語、インドネシア語、日本語